2021年02月10日 17:10更新
上越市立水族博物館うみがたりで開館からわずか2年間にイルカ6頭のうち、4頭が相次いで死んだ背景が明らかになりました。夏の暑さと冬の寒さが主な要因で、上越の気候に適応できずストレスを受けて、免疫力が低下した結果だということです。
これは10日に開かれた上越市議会文教経済常任委員会で明らかになりました。
イルカ4頭の死因については、市教育委員会が、去年夏に専門家による検証委員会を立ち上げ、飼育、建築、水質の観点から調査してきました。
報告書では、日本海側の上越市でのイルカの飼育環境が、うみがたりに来る前飼育されていた太平洋側の横浜・八景島シーパラダイスに比べて、厳しかったと指摘しています。
具体的には、上越の平均気温の範囲が2.5度(1月)~27.6度(8月)なのに対して、横浜は5.9度~26.7度と上越の方が温度差が大ききく冬の寒さが厳しいこと。
また、上越は横浜より夏の風速が弱く(上越が秒速平均6~11メートル、横浜が9~14メートル)、冬の風速が強いため(上越の最高平均が21~28メートル、横浜は17~25メートル)、総じてイルカの体感温度が夏はより暑く、冬はより寒かったととらえています。
うみがたりのバンドウイルカのプールは、日本海と一体的に見えるよう、海側に風よけの壁がありません。屋根も大きく開いているため、夏の直射日光や冬の強風をまともに受ける構造です。一方、シロイルカのプールにも屋根がありません。
さらに、バンドウイルカのプールは機械室の振動が八景島シーパラダイスと比べて測定値が高かったことも分かり、ストレスになった可能性は否定できないと指摘しています。
検証委員会では、こうしたことが合わさり、イルカがストレスを受け、免疫力が低下したことで、腎臓や肺の病気などで死んだ可能性があるとしました。
このほか検証の結果、飼育業務に関しては、イルカに遊具を与えて環境に変化をつける対策をしていたことから問題なかったとしています。
また、プールの大きさはほかの施設と比べ、深さに対して表面積が狭い傾向にあったものの、ストレスを与えて死因となった可能性があるとするまでには至らないとしています。
水質については死因につながるポイントは特定できませんでした。
なお、シロイルカの最後に死んだ2頭目のソーリャについては、同じプールで飼育されていたシロイルカのリーヤが死んだことで、単独の飼育となり、精神的ストレスが加わり、リーヤの死後からわずか2か月後に死んだ可能性があるとしました。
委員からは、うみがたり建設当初、イルカを飼育するうえで日本海側の気象変化やプールの大きさを問題視し、当時の担当部署と議論したと指摘しました。これに対し、上越市教育委員会の柳澤祐人部長は「今回の検証では、専門家から重複する指摘があった。真摯に受け止め、改善を模索したい」と答えました。また柳澤部長はJCVの取材に対し「あまりにも異常な気象の中でイルカショーをした場合、イルカやお客さんに影響してはいけないので、状況を見て個別に判断することになる。生き物と命の尊さを知る施設にしたい」と話しました。
イルカ飼育プール 水位1メートル下げ風当たらないように
教育委員会では、検証委員会の指摘をふまえ、一足早く、去年12月から飼育環境の改善に取り組んでいます。具体的には、バンドウイルカの飼育プールで、水位を1メートル下げ、風が当たらないようにしました。
教育委員会では今後、夏の日差しや冬の風を遮るための改修工事を新年度から進める方針です。
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