2022年12月31日 11:00更新
かつて上越市牧区の農家にとって、冬の貴重な収入源だった「細縄」づくり。今では10軒ほどが生産するばかりですが、昔ながらの縄をなう機械の音が冬の里山に響いています。
細縄は、稲ワラでつくる太さ4ミリほどの縄です。縄をなっているのは、牧区棚広新田に住む佐々木芳延さん(75)です。
今年の作業は、12月下旬になってはじめました。
佐々木さんは「昔は冬、農家はみんな区外に出稼ぎに出ていた。それをなくすために機械をつくってもらった」と話します。
細縄は40年ほど前まで、家の土壁などの骨組みに使う竹を縛るために必要でした。JAでは年間1億円の取り引きがあり、農家の冬の副業として、多い時には牧区全戸と清里区の一部で作られていました。
現在は主に冬囲い用として、区内10軒ほどが生産しています。
佐々木さんの妻 かよこさんは「子どもの頃は、放課後や休みの日になると、屋根でお喋りしながら長さを競って楽しんでいた」と懐かしそうに振り返ります。
手で縄をなう佐々木さん 身体で覚えた技は忘れない
かつて農家の暮らしとともにあった細縄づくり。最近は事情が変わってきました。
佐々木さん
「今は稲刈りがコンバインになり、材料(ワラ)がない。縄をなう機械ももう作られていないので、部品がほしくても手に入らない。なうのをやめた人から機械を譲ってもらい、部品を取って付け替えながらやりくりしている」
佐々木さんは、イネを稲架掛けした後に出るワラを使って細縄を作ります。
金沢市にある兼六園でも冬囲いに使われたことがある細縄。今では工芸品ともいえる存在です。
佐々木さんは「昔は集落全戸に機械があったが、今は私一人になった。ほんの地域の工芸品、体が続く限り守っていきたい」と、寂しさをにじませながら目を細めます。
牧区の細縄は、JAでの販売のほか県外へも出荷されています。細縄づくりは2月下旬頃まで続きます。
Copyright (C) 2016-2023 上越妙高タウン情報 All rights reserved.