2021年12月27日 07:38更新
今年4月に佐渡市の文化財に指定された両津地区秋津の菅笠製作技術。その技術を後世に残そうと地域住民限定の菅笠講習が開かれています。
菅笠講習会は、秋津菅笠技術保存会が開いています。講師は両津地区秋津在住の佐藤タカ子さんです。
この日は、笠の表面を取り付ける作業について佐藤さんが参加者に作り方や手順を説明しました。
秋津は良質なスゲがとれる環境から、昔は農繁期以外の地域の主要な産業として菅笠製作を行われてきました。
秋津菅笠技術保存会 池田雄彦会長
「過去には秋津の収入源としては大きかった。ある人は菅笠製作で子どもを学校へ出したひともいるくらい重要な作業だった」
今では菅笠の需要が少なくなり、島内で作り方を教えられるのは講師の佐藤さんのみに。
技術の伝承が危ぶまれている中、地域住民が3年前から講習会を開き、技術の伝承はもとより、笠の材料となるスゲの田んぼ管理など、保存活動を始めました。
佐藤タカ子さん
「後継者を立てないといけないと思っていたときに講習をやりたいといわれた。私一人だといつまでやれるかわからない」
地域の有志たちは、秋津地域に残るスゲや笠の生産量、販売量などを書き残した江戸から明治に至るまでの歴史的記録をまとめて、冊子にする活動もしました。
こうした積極的な取り組みや貴重な手仕事の技術が認められ、今年4月に秋津の菅笠制作技術は佐渡市の無形民俗文化財に指定されました。
秋津菅笠技術保存会 池田 雄彦会長
「菅笠の製作技術を認めてもらったのはうれしいが、将来残していかないといけないというプレッシャーがある。そういう意味でも講習会を続けてやっているが、同じメンバーで参加してもらってることがうれしい。その中の1人でも2人にでも続けていってもらいたい」
講習会は月に2回開催され、その中で参加者が1つの笠を製作します。しかし、その完成までは工程が多く技術の習得は容易ではありません。
参加者
「一年目やったけど見た目だめだし、もっときれいに作りたい」
今月19日には菅笠の見栄えを決める「笠縫(かさぬい)」が行われ、参加者はスゲを1枚ずつ丁寧に縫い込んでいました。
1年目の参加者
「一回縫ったが、ほどいた。大変だと思った」
2年目の参加者
「1年目は教えてもらうことをそのまましていたが、2年目は自分なりに考えてやっている。集中力や器用さなどが必要」
およそ30年菅笠を作り続ける佐藤さんも、いまだに満足する笠は作れていないと話します。
佐藤タカ子さん
「その時によって材料の質などもちがってくるし、できがいいのは本当にない。手に力が入るまで80歳くらいまではやりたいし、残していきたい」
この菅笠製作方法は昔から秋津の住民のみに開示されてきたものです。現在も良質なスゲの生産量が限られていることから、この講座は地域住民のみを対象に開かれています。
秋津菅笠技術保存会 池田雄彦会長
「各地区の特産物を専売県みたいなものを奉行所で与えていた。秋津では特産品として伝承されてきた。家を出てしまうかもしれない娘には教えず、江戸時代から近年までお嫁さんのみに教えてきたと聞いている」
また菅笠製作を通し、参加者たちも地域を見直すきっかけになっているようです。
親子の参加者「昔の人がこんな事をやってたんだと感じるいい機会」
秋津菅笠技術保存会 池田雄彦会長
「島内で唯一菅笠製作が残っている地域。無くさないで将来に続けていきたい」
地域で育む秋津の菅笠保存会では来年も地域住民を対象に講習を予定するほか、映像で製作過程の記録を残すなど地元の技術を守っていく取り組みをして行く予定だということです。
佐渡テレビジョン
Copyright (C) 2016-2023 上越妙高タウン情報 All rights reserved.