2017年03月07日 17:33更新
上越市板倉区国川の地すべりからきょうで5年。人への被害はなかったものの、住宅4棟を含む建物11棟が被害を受けた。地元の町内では災害の跡地に苗木を植え、復興に取り組んでいる。子どもからお年寄りまで、幅広い世代が参加することで、苗木とともに絆を育む活動につながっている。
先月、板倉区国川の地すべり跡地の近くで開かれた地元の雪まつり。20年以上続く、地域の恒例行事だ。2歳から80代まで集落に住む人の半数を超えるおよそ80人がゲームを楽しんだ。ゲームの合間には世代を超えて会話や触れ合いを楽しむ人もいた。参加した男性は「あまり地域の人と会う機会がないので、交流を含めて楽しめるイベント」。また女性は「なかなか集落の人が集まることがないので、いいですよ」と笑った。
5年前の3月7日。大量の雪解け水により、地すべりが発生。山の斜面が幅150m、長さ500mにわたって崩れ、住宅4棟を含む建物11棟が被害を受けた。その後、土砂は取り除かれ再び地すべりが起きないようにするための工事は終わっている。一方で、地すべりが起きた斜面の上が少しずつ崩れているため、現場では地すべりを防ぐための工事があと2年ほど続く見込みだ。
(2012年3月 地すべり現場上空から 提供:新潟県)
(土砂で流された建物)
(地すべり斜面の上で続く工事 提供:新潟県)
「地すべりがあった場所を再生させ、住民の絆をさらに深めたい…」
地元の町内会が「絆の森づくり」と題し苗木や植物を植える復興活動を2年前からはじめた。「絆の森づくり」を担当した大口春雄さんは、活動を通して世代を越えた交流を深めたいと考えた。
「ただ木を植えるのではない。参加者が共同作業を通じて人間・信頼関係を深める。〝雨降って地固まる〟というが、災害があったとしても、絆の森づくりを通じて、お互いのコミュニティーを強めていく」と力を込める。
(「絆の森づくり」を担当した大口春雄さん)
この活動はおととしから3回行われ、国川を含む宮嶋地区の住民、それに板倉区出身で首都圏に住む人たちなど毎回100人以上が参加した。植えられたのはクローバーのほかヤマザクラ、モミジ、カエデなどの苗木1300本。参加者の中には地すべりがあった当時、まだ幼かったり、生まれていなかったりと、災害のことを覚えていない、または知らない子どももいる。
国川では、夏と冬にまつりが行なわれている。この行事があるからこそ住民同士のつながりが強いと感じている大口さん。今後はまつりとともに「絆の森づくり」を続けることで住民の交流が深まり、災害が起きたとき避難行動や住民の支え合いに役立つと考えている。
大口さんは「たとえば家がつぶれて逃げ遅れた人がいたら、誰が住んでいるかわからなければチェックしなければならない。でも私たちの町内はみんな(顔と名前が)わかっている。災害には強い町内だと思う。何かやろうねと言った時に何かやろう!と言う人たちが何人いるかが大切。究極は人づくりです」と、今後も前向きだ。
地すべりから5年、跡地で育まれる、苗木と住民の絆。国川集落は災害を乗り越えこれまで以上につながりを深めている。
(地すべり跡地に咲くサクラ)
※2017年3月7日 ニュースLiNKで放送 初回18:30~