2022年02月05日 11:00更新
妙高山麓の地下2000メートル付近で発生する地熱を生かした発電の可能性を探る大規模な調査が進められています。計画は10年後の実用化を目指していて、地元では雇用の創出や発電の過程で生まれる温水の活用が期待されています。
地熱発電は地下2000メートルから200℃ほどの蒸気をくみ上げて、タービンを回す仕組みです。二酸化炭素がほとんど出ず、再生可能エネルギーとして注目されています。
妙高山麓で地熱の調査をしているのは、大手ゼネコンの大林組と、地盤調査会社、基礎地盤コンサルタンツの2社です。調査は3年前に始まりました。
場所は関・燕温泉地区、赤倉・新赤倉温泉地区、池の平地区、妙高山の外輪山の1つ神奈山です。このうち関・燕温泉地区、赤倉・新赤倉温泉地区では、地熱発電に活用できる200℃以上の蒸気がある可能性がみえてきました。
大林組 田中達也部長
「妙高山を中心とした大きな熱エネルギーがある。地表調査で有望な推定結果が確認された。今後の調査が進展することで、地表調査の正しさを確認できるのでは」
現在、開発候補地として5か所が挙げられています。今後さらに調査を進め発電に十分な地熱が確認された場合、計画では2027年度に発電所を建設し、2031年度の実用化を目指します。発電量は未定ですが、中規模な発電所とした場合、5メガワット、およそ8300世帯の電力を賄うことができるということです。
そうした中、妙高山麓の住民からは地熱発電というビッグプロジェクトへの関心が高まっています。調査会社は5年前から、地元住民を対象に勉強会や説明会などを開いてきました。この日は、地熱発電の過程で80度以上の温水が発生することが示され、参加者は温水を融雪やハウス栽培に利用できないか話し合いました。
大林組 田中達也部長
「調査の進め方、地熱エネルギーを利用した地域振興の考え方を話した。熱水をどう利活用できるかを主体に、地域での利用を話し合っている。調査の進展とともに具体的な使い方の検討が進むことを期待している」
燕温泉組合 藤巻茂夫 組合長
「屋根の雪掘りは大変。(温水の活用は)融雪、床暖房など、いろんな熱交換の夢はある」
そう話すのは、勉強会に参加する燕温泉組合の組合長、藤巻茂夫さんです。地元が開発候補地の1つに選ばれたことで、クリーンエネルギーを身近な存在として実感しています。
燕温泉組合 藤巻茂夫 組合長
「地熱で電気を起こす自然エネルギー。CO2問題もあるので、おもしろい」
一方、来年度から本格的な掘削調査に向けた準備が始まります。地元からは、温泉の湯量や成分の変化などを心配する声もあります。
燕温泉組合 藤巻茂夫 組合長
「1番心配なのは、温泉が止まる。穴を1000~2000メートルも掘ったら、温泉がどこへ行くか分からない不安がある」
こうした声を受け、調査会社では月に1回、源泉6か所の温度、成分、湯量に変化がないかモニタリングしています。温泉組合では随時報告を受けているということです。
燕温泉組合 藤巻茂夫 組合長
「燕温泉と関温泉は泉質が違う。どこを流れてくるのか自分の地域の温泉を知るきっかけになった。ボーリングの機械の音、掘る深さなどについて、(事業者が)勉強会で答えてくれた」
大林組 田中達也部長
「地域の理解と協力が1番大事。連絡会を継続し、妙高市と一体となって進めたい」
燕温泉地区は、昭和末期をピークに旅館の売り上げが3分の1に減りました。さらに、コロナ禍で先が見通せない中、藤巻さんは地熱発電がにぎわい作りにつながればと期待しています。
燕温泉組合 藤巻茂夫 組合長
「(地熱発電で)地区のコマーシャルになる。PRの仕方も変わる。大きな企業が地区に入っても提携を結び、共存できる」
このプロジェクトについて、妙高市は市が掲げる2050年のゼロカーボン達成目標と同じ方向性だとして、地熱エネルギーを地元に活用できるアイデアを考えていきたいと話しています。
この地熱発電、実用化に向けた事業費はおよそ100億円で、電力は発電所に売る計画だということです。また、地元では現在、温泉事業者や有識者などで作る地熱連絡会が中心になって、地熱を生かしたまちづくりの検討を進めています。
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