2024年02月20日 11:53更新
透き通るような色と、涼しげな見た目が人気を集めている「シーグラス」をご存知でしょうか。海岸に打ち上げられたガラス片のことです。
このシーグラスを使って上越市で作品を作っている男性がいます。男性は病気の後遺症で手足にまひが残るなか、地域の子どもたちのもとを訪れて、作品を通して諦めないことの大切さを伝えています。
いきいき泳ぐ魚。輝くランプ……これらの作品を作ったのは、上越市に住む下鳥幸彦さん(59)です。
下鳥さんは、建築の職人として働いていた11年前に突然脳出血で倒れ、重い後遺症で右半身にまひが残りました。仕事への復帰を断念し、ショックで生きる意味を見失ったといいます。
下鳥幸彦さん
「当時は、山など人のいないところばかり行き、人がいれば下を向いていた。記憶もない。生きているのも嫌だった」
そんな下鳥さんを、家族が「気分転換に」と連れ出した海で、人生を変える出会いがありました。
これは「シーグラス」と呼ばれるもので、海に流された瓶が砕け、波に洗われるうちに丸くなったものです。通称「海の宝石」とも呼ばれています。それまで芸術に関心のなかった下鳥さんの心を突き動かしました。
下鳥幸彦さん
「シーグラスは加工もせず、拾ってきたものを何回も洗う。何を作るか考えず、ひらめいたものをただ夢中で作っていた」
作品は右半身が思うように動かないため、左手と口などを使ってシーグラスをつかみ、接着剤をつけて作ります。1000個以上を使い、制作に3か月かかった大作もあります。
制作に3か月の大作
そうしたなか、障がいのある子どもたちが、下を向いたり将来に悩んでいることを知りました。
下鳥幸彦さん
「この地域にも、人と会いたくないなどうつむいている子がいる。勇気を与えたい」
そこで下鳥さんは、去年秋から市内の特別支援学校などを回り、作品を展示したり子どもたちに諦めずに打ち込む大切さを伝えてきました。
この日、吉川区の県立吉川高等特別支援学校を訪れた下鳥さんは、生徒に作品を説明しながら「(後遺症で)知能が一時はゼロになったが、少しずつ頑張って計算などもまたできるようになった。頑張れば必ずできるから。君たちも頑張って」とエールを送っていました。
生徒
「作品を見て心がほっとした。私も作品を作っていて絵を描くことが得意なので、得意なことを生かしていきたい。(春から)就職するので、大変なことがあったら下鳥さんの作品を思い出して頑張りたい」
下鳥幸彦さん
「うれしくて涙が出た。子どもたちと接することで、自分の方が勇気をもらっている。頑張ってやろうという気持ちを子どもたちに見てもらいたかった」
上越市大和4 アトリエユキ
2階の展示室
下鳥さんの自宅の2階には、作品を展示するアトリエがあります。
1階に新設された「小さな美術館」
今年1月には、車いすの人でも見学できるよう、1階に大きな作品を飾る展示室を設けました。
作品は下鳥さんの中学や高校時代の同級生にも元気を与えています。
同級生
「彼の昔のイメージからは想像できない、繊細できれいでかわいい作品。(シーグラスが)ここまでの作品になるとはびっくり」
「病気で下を向いていたのを知っているので、復活したなとうれしくて。シーグラスの中に『光』が入っているのが彼らしい。見ている方が勇気と感動もらった」
下鳥幸彦さん
「これが『第二の人生』。障がいがある人も一緒に頑張ろうという気持ちを伝えていきたい」
下鳥さんのアトリエは、誰でも無料で見学することができます。ただし、事前の電話連絡が必要です。
また、下鳥さんは今後も学校での展示活動を続けることにしていて、学校を募集しています。お問い合わせは下鳥さんまで。
下鳥幸彦さん「アトリエ ユキ」
■住所:上越市大和4-5-15(上越妙高駅から車3分)
■電話:TEL 090-8723-8086
■見学無料 ※事前に電話が必要
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